配信中の女性ライバーに襲い掛かった
「ほぼ毎日のように高野さんの部屋からは、配信を聞いて笑う中年男性の声が聞こえていました」
そう話すのは、女性ライバーの佐藤愛里さん(22歳)を刃物で刺した高野健一容疑者(42歳)の近隣住民(30代)だ。
この近隣住民(30代)が高野容疑者の笑い声を最後に聞いた2日後の3月11日、事件は起こった。
佐藤さんは“最上あい”名義で活動している人気ライバー。この日、徒歩で山手線を一周する企画に挑戦、動画を生配信しながら1人で歩いていた。高野容疑者は配信で佐藤さんの居場所を特定し、後をつけてJR山手線高田馬場駅から数分の路上で襲い掛かった。
首や頭部などをメッタ刺しにされた佐藤さんは、搬送先の病院で死亡が確認された。死因は出血性ショック。高野容疑者は殺人未遂の疑いで現行犯逮捕された。
佐藤さんは10代後半だった2021年ごろから、地元で動画配信を始めた。すぐさま評判のライバーとなり、高野容疑者は佐藤さんの熱心なリスナーに。
その後、個人的に連絡を取りあう顔見知りになったとみられる。
借金返済を求めて民事裁判を起こした
2022年9月から11月にかけて、高野容疑者は佐藤さんにおカネを貸すように。その総額は200万円を超えていたとされる。
「警察の取り調べで、『消費者金融などから借金して、カネを工面していた』などとも供述しているようです。佐藤さんは生活費やアパートを借りる費用との名目で、カネを借りていた。『返す』と約束していたようですが、なかなか返済されなかった。そこで2023年8月に返済を求めて、民事裁判を起こした」(全国紙社会部記者)
宇都宮地裁栃木支部は2023年12月、佐藤さんに対し、支払いを命じる判決を出した。
「でも、佐藤さんは判決が出てもおカネを返さなかった。連絡が取れなくなったこともあり、高野容疑者は2024年1月に警察に相談していたようです。今回の事件はそうした金銭的なトラブルが背景にあるとみられています」(前出の全国紙社会部記者)
高野容疑者の暮らしぶりは、決して余裕があるものではなかった。
1K・6畳・家賃3万円のアパート暮らし
栃木県小山市——。高野容疑者はJR小山駅から徒歩30分以上かかる新興住宅地の単身者向けアパートで一人暮らしをしていた。築29年、間取りは6畳の1Kで、家賃は3万円前後。車がなければ生活はやや不便な立地だ。
「支援団体が借り上げて、低価格で提供している部屋もあります。高野さんもその一人だったようです」(住民の一人)
複数の住民によると、生活に困窮したり、複雑な事情を抱える人も少なくないという。
「車があれば駐車場で見かけることもあるのですが、それもなかった。車は持っていなかったと思います」(前出の住民の一人)
冒頭の近隣住民は高野容疑者の暮らしぶりをこう明かす。
「引っ越してきたのは1年ほど前のことだと思います。笑い声は毎日のように聞こえてきました」(以下「」も)
アパートの壁は薄い。そのため、ほかの部屋の声でも聞こえてくることがあるという。それは高野容疑者の「至福の時間」だったのかもしれない。
つづく後編記事『《女性ライバー刺殺》「ワハハハ!」アパート内に響いていた容疑者の「爆笑」と、警察がキャッチしていた「危険な兆候」』では、近隣住民が明かした事件の予兆について、さらに詳報する。